「ストレッチをすると、その場では体が軽くなるのに、すぐ元に戻ってしまう…」そんな経験はありませんか? じつはストレッチの効果は、やり方だけでなく「時間」「回数」「強さ」で大きく変わることが、研究で少しずつわかってきています。今回は、ご自宅でのセルフストレッチに役立つポイントをご紹介します。
目次
その場の「柔らかい」は、長続きしない
ストレッチの直後に体が柔らかく感じるのは、筋肉そのものが変わったからだけではありません。「伸ばされる感覚」に体が慣れて、深くまで伸ばせるようになることも大きく関わっています。
ふくらはぎを5分間伸ばした研究では、関節の動く範囲の広がりは30分ほど続いた一方で、筋肉そのものの柔らかさは10〜15分ほどで元に戻ったと報告されています。
ただし、がっかりする必要はありません。ゆっくり伸ばすストレッチを数週間続けると、筋肉そのものも柔らかくなっていくこともわかっています。大切なのは「その場の効果」より「続けること」です。
まずはこの目安から
(高齢の方は60秒)
(週の合計5分以上)
(3〜12週間ほど)
※研究結果をもとにした目安です。体調に合わせて無理なく行いましょう。
セルフストレッチの4つのコツ
反動をつけず、ゆっくり伸ばして止める
ご自宅でのストレッチは、反動をつけずにゆっくり伸ばし、その姿勢をキープする方法(スタティックストレッチ)がおすすめです。自分で強度をコントロールしやすく、継続することで筋肉そのものを柔らかくしていける方法です。弾むように反動をつけると、伸ばしすぎて筋肉や腱を痛めることがあるので気をつけましょう。
1回30秒。長く感じたら分けてもOK
若い方を対象にした研究では、15秒では変化が見られず、30秒と60秒で同じくらいの効果がありました。65歳以上の方を対象にした研究では、60秒が最も効果的だったという報告もあります。
また、合計の時間が同じなら、10秒を3回に分けても効果は変わらないとされています。家事や仕事の合間に、少しずつ取り入れてみてください。
週1回まとめてより、週3回に分けて
1週間の合計時間をそろえて比べた研究では、週1回まとめて行うより、週3回に分けて行ったほうが柔らかくなりました。目安は週に合計5分以上。「毎日やらなきゃ」と構えすぎず、週3回を習慣にするところから始めましょう。
「気持ちいい」より少しだけ強めを、少しずつ
これまでは「痛くない範囲で」と言われることが多かったストレッチですが、最近の研究では、「気持ちいい」より少し強めのほうが、短い時間で大きく柔らかくなることがわかってきました。
ただし、いきなり強く伸ばすのは禁物です。少しずつ伸ばしていき、痛みが強いときはすぐに緩めましょう。痛いのが苦手な方は、弱めでも時間を長めにとれば効果が期待できます。
おすすめのタイミングは「お風呂上がり」
体が温まっていると、伸ばしたときの痛みを感じにくくなります。ただ、温めるだけでは筋肉の硬さはあまり変わらないため、温まったあとにストレッチをするのがポイントです。
よくあるご質問
- 運動前にストレッチをすると、力が落ちるって本当?
- 長い時間(1か所30〜60秒以上)伸ばすと、直後に一時的に力が出にくくなることがあります。ただ、1か所30秒くらいまでにして、その後にウォーキングや軽いジョギングなどで体を動かせば、影響はほとんどないと考えられています。避けたいのは、運動の直前に長く伸ばすストレッチ「だけ」を行うことです。
- ストレッチばかりしていると、筋肉が落ちませんか?
- 続けても筋肉が落ちる心配はほとんどなく、むしろわずかに筋力が上がるという研究結果もあります。筋肉をしっかりつけたい場合は、筋力トレーニングと組み合わせるのがおすすめです。
- ストレッチを続ければ、ケガをしなくなりますか?
- 肉離れのような筋肉のケガは、起こりにくくなる可能性があります。ただし、骨折や捻挫、腱のケガまでは防げないため、ほかの対策も大切です。
- 年齢的に、もう柔らかくならないのでは?
- 高齢の方でも、若い方と同じようにストレッチの効果が得られたという研究があります。今硬いと感じている方も、続けることで少しずつ変わっていけます。
今日からできる、かんたんセルフストレッチ
太もも裏(座って行う)
- 床に座り、片脚を前に伸ばします。もう片方の脚は膝を曲げて楽にします。
- 背すじを伸ばしたまま、おへそを前に出すように上半身をゆっくり倒します。
- 太もも裏が伸びたところで止め、30秒キープ。反対側も同じように行います。
背中を丸めるより、脚の付け根から倒すイメージで。
ふくらはぎ(壁を使って行う)
- 壁に両手をつき、片脚を一歩後ろに引きます。
- 後ろ脚の膝を伸ばしたまま、かかとを床につけます。
- 前脚の膝を曲げながら体重を前に移し、ふくらはぎが伸びたところで30秒キープ。反対側も行います。
つま先はまっすぐ前に向けましょう。
胸の前(壁を使って行う)
- 壁の横に立ち、肩の高さより少し上で肘を曲げて、前腕を壁につけます。
- 壁と反対の方向へ、体をゆっくりひねります。
- 胸の前が伸びたところで30秒キープ。反対側も行います。
デスクワークで肩が前に入りやすい方におすすめです。
施術とセルフケアの両輪で
施術を受けたあとの体は、とても良い状態です。その状態を長く保ち、体の中身から変えていくには、ご自宅でのコツコツとしたセルフストレッチが欠かせません。
どのストレッチが自分に合っているかわからない、正しくできているか不安、という方は、ぜひ店舗のスタッフにお気軽にご相談ください。お一人おひとりの体に合わせたセルフケアをご提案します。
参考文献
本コラムは、ストレッチングに関する解説書(エビデンス編)で紹介されている研究をもとに作成しています。主な論文は次のとおりです。
- Feland JB, et al. The effect of duration of stretching of the hamstring muscle group for increasing range of motion in people aged 65 years or older. Phys Ther. 2001;81:1110-1117. PubMed
- Johnson AW, et al. Hamstring flexibility increases the same with 3 or 9 repetitions of stretching held for a total time of 90 s. Phys Ther Sport. 2014;15:101-105. PubMed
- Konrad A, et al. Chronic effects of stretching on range of motion with consideration of potential moderating variables: A systematic review with meta-analysis. J Sport Health Sci. 2024;13:186-194. PubMed
このほか、同書で紹介されている Bandy ら、Mizuno ら、Thomas ら、Behm らの研究も参考にしています。
※本コラムは、ストレッチに関する研究報告をもとに一般的な情報をまとめたものです。効果には個人差があります。痛みやしびれがある方、ケガや持病で治療中の方、妊娠中の方は、ストレッチを始める前に医師にご相談ください。ストレッチ中に強い痛みや違和感が出た場合は、すぐに中止してください。
